助産師
高室 典子(たかむろ のりこ)
札幌出身。47歳。看護学校を卒業後、北海道大学脳外科に看護師として勤務後、北海道大学の助産師学校で助産を学ぶ。素顔は、外科医の夫を持つ4人娘の母親。1994年に「助産院エ・ク・ボ」開業。2000年には、道内ではいち早く「国際インファントマッサージ協会公認インストラクター」の資格を取得し、ベビーマッサージの重要性を講演しながら指導を続ける。助産師としての仕事以外にも、大学講師や大手百貨店の育児アドバイザー、中学校での性教育など、活動の幅は広い。趣味は歌で、夢は「1000人の赤ちゃんを取り上げて“のど自慢”に出場すること(笑)」。助産師としては22年目、現在までに800人の赤ちゃんを取り上げている。
助産院「エ・ク・ボ」ホームページ
http://www.hascup.com/ekubo/

■
賞状
今年の7月に受験、先日合格が発表されたばかりの「IBCLC(国際認定母乳コンサルタント)」の合格証。IBCLCとは、母乳育児援助に必要な技術・知識・心構えを持っていると認定された健康医療専門家のこと。

■ ベビーマッサージ
ベビーマッサージ教室の様子。北海道では第1号で、現在までに600組のお母さんと赤ちゃんが参加した。「赤ちゃんに“あなたの体は大丈夫よ。誰も何もしないよ”と教えてあげる大切な行為。気持ちと体の感覚を統一して、不安のない素の状態に戻してあげるんです。お母さんと子供の絆も強まりますよ」
気になるカバンの中身
- 鞄
- 「今年の春にAPIAのインデックスで購入。大きくてたくさん入るので重宝してます。難点は、たくさん入りすぎて重くなることかな(笑)」
- 出産予定日を計算するメモリ
- 「裏に桃の絵が書いてあるから通称“桃太郎”と呼んでます(笑)。日付の書かれたメモリを調整すると、出産予定日が分かる道具です」
- 消毒用脱脂綿ケース・聴診器・ハンドクリーム
- 「いつも鞄に入っている必需品です。仕事の七つ道具の一部。手を消毒して、しっとり滑らかな手で赤ちゃんを触るのにハンドクリームが役立っています。普段は赤ちゃんに頬ずりしても大丈夫なように、化粧もしていません」
バックナンバー
自分も育児不安を抱える母親だった。
小さなバラの壁紙、ソファーカバーに始まり、ピンクを基調とした一室ではエッセンシャルオイルが焚かれ、オルゴールのCDが優しく流れている。そこが今回訪れた「助産院エ・ク・ボ」。経営者の助産師・高室典子さんは 4 人の娘を持つ母親でもある。
「私ね、趣味が妊娠で特技がお産って言ってるの。ハハハ、冗〜談だよー ! 」気さくに笑う姿に人柄がにじみ出ている。
助産師をめざすきっかけは、看護学校時代、初めての実習で見たお産だった。
「陣痛の時はすごく苦しそうなんだけど、赤ちゃんが生まれた後、お母さんがすごくいい顔するの。どんな人でもキレイに輝いて見えて…お産ってすごい!と思ったんです。家に帰って母に“今日、お産見たよ!”って教えたら、“あなたを生んだ日は人生の中で 1 番素敵な日だった”と言われて…。やっぱりお産には何かあると思って、それで産科に勤めたいと思ったの」
脳外科で看護師として勤務後、 24 歳で結婚。助産師の資格を取得したのは 26 歳の頃だった。
「助産院で働いて 1 年後に長女の妊娠、出産で育児休暇に入ったんです。そしたら社会と隔絶されて取り残された気になって、一生このままなのかなと不安になって…。その時に、世の中に育児不安を抱えるお母さんが多いことに気づかされたの。病院に行くまでじゃないんだけど、誰かに教えてもらわないと心配なこととかね」
そこで思いついたのが、地域でそうした不安を抱えるお母さんを対象にサロンを開業すること。妊娠や出産、育児中のちょっとした相談に乗る、そんな場所を作りたいと思うようになった。開業は今から 12 年前。
「最初はね、自分の子供がまだ小さかったから母乳と健康相談だけだったの。今の時代はインターネットとか携帯電話とか、便利にコミュニケーションがとれる時代だけど、やっぱり大切なのは人の温もり。直接会って顔を見て、話を聞きながら“大変だったね”って言って手を握ってあげるだけで、涙を流してスッキリして帰る人も多いよ」
どんな些細なことでも相談できるような、よろず相談所。訪れる人が安心して相談できるのは、高室さん自身も悩める母親だったことも大きいだろう。
「赤ちゃんが泣いて寝てくれないと心配だし、寝たら寝たで死んでるんじゃないかって不安になるんだよね。そういうのは私自身が陥ったことだからよく分かるの。特に家にこもってるから不安が募っちゃうの。そんな時、ちょっと頼れる人がいたらいいでしょ?だから私がなろう!と思ったの」
自然の持つ“生む力、生まれる力”を尊重して。
母乳相談を受けていて、「育児とお産には密接な関係がある」と実感。エ・ク・ボで自宅出産の介助をスタートしたのは今から 9 年前のこと。
今では病院で子供を産むのが主流となり、自宅で生むという選択や自然出産自体が、未知でベールに包まれている部分も大きい。
「赤ちゃんはね、もともと生まれ出る力を持ってるんだよね。それなのに早く生まれるようにと陣痛誘発剤や促進剤を使ったり、病院の分娩台自体も医師主導のものだからね。もともと出てくるものは引力の関係で下に力がかかるでしょう。だから本当は、しゃがんだりした方が赤ちゃんにもお母さんにも負荷がかからないの」
赤ちゃんは、お母さんの生む力である“陣痛”の波にあわせて、ゆっくりと生まれ出てくるのが本来の自然の形だという。
「赤ちゃんはね、お母さんの骨盤の間から頭をずらしながら自分で出てくるんだよ。たまーにね、赤ちゃんと目があうこともあるの。にっこり笑ったりする子もいるよ。赤ちゃんってエネルギーの塊だからね、生まれた瞬間にわーっとパワーをもらうの。それが若さを保つ秘訣かも(笑)」
そうした自然な形の出産に興味があっても、リスクを心配する声も根強い。特にお父さんに多いのだとか。
「今は科学的データをとって、自宅出産の安全性を確かめてから判断しているので大丈夫。突発的に何かあった場合もサポートしてくれる嘱託医がいますし、その時のためにスタッフ 2 名でお産に立ち会うので、すぐに病院に走れる体制は整っているんです」
責任も大きい仕事だが、何よりも命の誕生に居合わせられる喜びは、助産師の特権ともいえる。
「何度経験しても、お産はドラマ。本当に助産師の仕事って素敵だなと思う。出産は人生の岐路だから、そんな大切な場面を一緒に見せてもらえて、喜びのお裾分けをもらえるんだから…。定年退職もないしね(笑)」
愛情の可能性が広がるのが子育て。
相談に訪れる女性には色んなタイプの人がいる。自信満々の鎧をかぶっているけれど実は不安で仕方がない人、とにかくフリースタイルで生みたい人など様々。
高室さんは本人の希望を叶えるため最善を尽くすが、いくら助言をしても、生む本人が自立していないと不安の連鎖から逃れられないことに気付いたという。
「産前産後って初めてだと不安で、その時、分からなくて迷うだけだと思うんだよね。困ったことがあるたびに、ずっと私に頼って依存するのは違う。きちんと自分の足で立って、最終的には自分で考える人に育っていって欲しいというのが願い。そうした内面も含めて、女性には美しく健康であって欲しい。母として女性として健康的にイキイキと。生んだ後もね(笑)」
せっかく女性に生まれたのだから、女性だけが持つ良さを大切にして欲しいと願う。
「社会の一番の基礎が家庭。だから大切にして欲しいの。男女平等なんて言っても、そもそも役割が違うと思うんだよね。女性は家庭や世の中を明るくする役割だと思う。だって女性は脂肪層も厚くて、体が柔らかい筋肉で出来てるんだよ。表情筋も柔らかいからにっこり笑えるの。女性の笑顔があればその場が和むじゃない?」
助産院エ・ク・ボは優しさと親切を運ぶ− easy.kind.bring- の略で、お母さんが笑顔になる社会になればいいなという願いが込められている。
とはいえ少子化が進んでいる現状をみると、子供を持つことの夢を持てない女性も増えているのかもしれない。
「子育てはね、面白いよー。自分を違う人にしてくれる、自分が変わるチャンスだと思う。決して本や情報からは得られないような変化を子供が自然に与えてくれるの。自分の人生の豊かさが増すと思うよ。愛情って子供が 2 人になると半分になるかというと、そうではなく 2 倍になる。 3 人になると 3 倍…という具合に、人間の持っている愛情の可能性を広げてくれるの」
これからお母さんになる世代の方へメッセージをいただいた。
「とにかく感性豊かに生きて欲しいです。たくさん恋をしたり、映画を観たり、本を読んだり。それが全て子育てに役立つから! 成熟した女性がいい子育てをするんですよ。だから私は今、成熟して自立した女性を増やすために種まきしているんです」
私のお気に入り
■マヌカハニー

「3年前に産婦さんから教えてもらって以来、愛用のニュージーランド産、蜂蜜。殺菌効果があるので、喉がイガイガする時にスプーン1杯舐めます。さらっとしていて舌触りも良く、風邪予防にとても重宝しています」
■POY-SIAN

「タイに旅行した時に、あちらで大流行していた携帯用“鼻詰まり解消スティック”。このメントールの匂いを嗅ぐと、ぐずぐずしている鼻も一気に通るんです。面白いでしょ(笑)」
■とらうべ

「妊婦さんのお腹にあてて赤ちゃんの心音を聞く道具。助産師になった時、お祝いに友人からもらったもの。飛行機で産気づいた人の為に旅行時には必ず持参しているんだけど、まだ一度も役立ったことはないの(笑)」