創成イーストをはぐくむ人
お寺のお兄さん 瀬川康さん
投稿日:2026.4.30
その他
今回はNPO法人E-LINKの副代表理事を務め、「お寺のお兄さん」として創成イーストエリアの北海寺を拠点に活動する瀬川康さんにお話を伺いました。お寺を舞台にした多世代交流や、自立学習塾を通して伝える「学び」の価値観、創成イースト地域における未来のビジョンなどに迫ります。地域に溶け込み、子どもから高齢者までを柔らかさでつなぐ若きリーダーの、挑戦の物語です。

―現在はどのような活動をされているのでしょうか?
瀬川さん:E-LINKでは「だれもがヒーローとキヅケル地域社会」をミッションに、子どもの居場所・学び場を中心に地域のみんながヒーローと気づき、ヒーローたちと築き上げる社会を作ることを目的に活動しています。その一環として、北海寺を拠点にした寺子屋事業を担っており、僕は地域食堂「おちゃのま」と自立学習塾「あわい」を担当しています。
平日の午前中は、お寺の事務作業から一日が始まります。毎週月曜日は高齢者や学生のボランティアの方々と調理準備をして、子どもたちや親子を呼んで地域食堂をやっています。そして火曜日から金曜日は自立学習塾の塾長として、子どもたちの学びのお手伝いをしています。他にも季節ごとのイベントの運営を行うことで、お寺を地域に開いて、子どもから高齢者まで幅広い世代が交流し、そこから自然な学びが生まれる場所づくりに取り組んでいます。

北海寺
〜研究者から現場の道へ〜
―E-LINKに入社される前は何をされていましたか?
瀬川さん: 出身は山梨で、大学進学で岩手へ、大学院で北海道に来ました。大学院では認知心理学や動物行動学の研究をしていて、将来は研究者になるつもりでした。けれど、研究を進めるうちに「自分が研究している知識を世に広めること」と「誰かの役に立つこと」との間に、すごく距離を感じてしまったんです。そんなときにE-LINKでやろうとしていたイベントの立ち上げに関わらせてもらって、自分のやっていることが目の前の人の役に立ち、還元できたことに「これだな」と思いました。
―人の役に立つことへの距離が、瀬川さんにとっての転機になったのですね。
瀬川さん:はい。自分の持っている知識や経験を、もっと手触り感のある距離で誰かに還元したい。そう思ったときに、研究室を飛び出して、現場に入ってみようと決めました。ちょうどその頃、ハーバード大学の「幸せに最も関連があるのは、身近な人との関係の質である」という研究結果を知り、すごく腑に落ちたんです。大きな社会の歯車や、遠い世界の役に立とうとするよりも、もっと小さなコミュニティの中で、自分を知ってくれている人たちのために役割を見つけていきたい。そこでたどり着いたのが教育であり、今の僕の生き方につながっています。

〜「自ら学ぶ」からこそ育つ。現代の寺子屋としての場づくり〜
ー次にお寺での活動の中身についてお伺いします。「地域食堂」はどんな雰囲気で行われていますか?
瀬川さん: ひとことでいうと「親戚の集まり」のようなご飯会ですね。地域の高齢者の方が調理を手伝ってくれたり、学生ボランティアが子どもたちと本気で遊んでいたりして、子どもたちの親御さんも含めて、幅広い世代が対等にコミュニケーションをとれる場所になっています。僕はこうしたコミュニケーションの中で学べることってたくさんあると思っていて、それが一番自然に生まれるのが、みんなでご飯を囲みながら会話を楽しんでいるときだったりするんですよね。また、「お寺」という場所だからこそ、高齢者の方も行きやすく、親御さんも安心して子どもたちを連れて来られるので、そういう意味でお寺でやる意味を感じています。
ー「自立学習塾」は、一般的な塾とは少し方針が違うとお聞きしました。
瀬川さん:E-LINKの塾では「勉強を通して自ら学ぶ力をつける」という方針を掲げています。もちろん勉強のサポートはするのですが、勉強を通して子どもたちが自ら学びたくなるような「考える力」や、自分で計画を立てて進める力を養うことを重視しています。一人ひとりが自立して学んでいた、かつての「寺子屋」のようなあり方を、このお寺で再現できればなと考えています。

ーどちらも考えることや学ぶことにつながっているのですね。
瀬川さん:そうですね。現代は社会が便利になりすぎて、考えなくても生きていけるようになっていると感じています。同時に、自分で生きていくためにやっていたことを他人にしてもらえるからこそ、個人の役割が奪われているという感覚もあり、そうした「自分がいなくても社会は回る」という感覚が、生きづらさや、生きる意味の喪失に繋がっている気がしています。だからこそ「自分の生きる力」を取り戻すために、学び考える、その最高の学びの場が地域のような身近なコミュニティだと思っています。

ーそうなんですね。こうした活動で「お寺のお兄さん」として、意識していることを教えてください。
瀬川さん:一番は距離感ですね。これは僕の人生のテーマに近いところもあるんですが。誰とでも一律の距離で接するのではなく、その人との適切な距離みたいなものを常に考えていたいなと思っています。相手をしっかりと見て、その瞬間にいい間合を探る。それが僕にとってのコミュニケーションであり、本当の意味で相手と「対等」でいるための作法だと思っています。以前、知人に「相手に合わせて形を変えられるスライムみたいだよね」と言われたことがあって(笑)。そうやって滑らかに形を変えながら、年齢や役割関係なく、1対1で話せる。それが、お寺という多様な世代が集まる場所での、僕なりの役割かなと思っています。
ー活動を通して地域の子どもたちと関わる機会が多いと思いますが、感じることはありますか?
瀬川さん:やっぱり「子どもたちの成長」ですね。もはや親戚のような感覚です。活動を始めたてのときに来ていた子たちが、どんどん大きくなって、もう面倒をみる相手じゃなくて、自分と同じ立場にいるって、すごく面白いなと思うし、友達が増えた感覚で嬉しいですね。

〜街全体をフィールドに、みんなで遊び尽くす〜
ー今後、この創成イーストで挑戦したいことはありますか?
瀬川さん:この地域全体を、一つのRPGのフィールドのようにしたいと思っているんです。街のあちこちに『クエスト』が転がっていて、遊びながら地域の人と関わっていくうちに、いつの間にか自分自身もレベルアップしている。そんなワクワクする仕組みを作りたい。なぜ自分は生きているのか、なぜ自分がこのご飯を食べることができているのか。そういった世界の仕組みを知り、自分でできることを増やしていく過程は、本来ゲームのレベルアップと同じように楽しいはずなんです。「遊び」と「学び」の境界線をなくし、街全体を大きな遊び場にしていきたいですね。
ー最後に、この街で暮らす皆さんにメッセージをお願いします。
瀬川さん: 創成イーストは歴史があって、それでいて新しい繋がりを受け入れる懐の深さがある街です。大人も子どもも、もっとこの街を面白がって「遊んで」いい。遊びと学びの境界線をなくして、みんなで一緒に面白い未来を作っていければ嬉しいです。みんなで一緒に遊びましょう!

プロフィール
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瀬川康さん
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札幌市中央区南4条東3丁目19山崎カルチャーセンター2階
Tel 011−522−7668
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