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ガンゲット・ダイマ 長嶺 久美子さんと三重野 直美さん

投稿日:2022.12.5

飲食店

今回は、創成イーストエリアの二条市場横の路地「二条食堂街」でアコーディオン音楽をテーマにした飲食店を営む、ガンゲット・ダイマの長嶺 久美子(ながみね くみこ)さんと三重野 直美(みえの なおみ)さんにお話しをお伺いしました。
※ガンゲット・ダイマさんのお話しは第一章~第三章の三回に分けてお届けいたします。

第一章 ~創成イーストとの出会いとラオス支援のはじまり~

サッポロ不動産開発・永井(以下、永井):ガンゲット・ダイマさんが創成イーストでお店を営まれることになったきっかけは?

長嶺さん(以下敬省略): 開業して22年目です。創成イーストに来て17年目、その前の5年間は、円山で「カフェダイマ」として営業していました。
開業して間もないころ、フランスの古いミュゼット音楽を聴いてすっかりハマった私と三重野は、アコーディオンとピアノでレコード音源の耳コピ演奏を始めました。2003年にバルミュゼットのバンド「La Zone」を結成し、この音楽に相応しいロケーションを求め、創成イーストに移転したのが2007年です。
「ガンゲット」というのは、フランス・パリの大衆的なダンスホールやバルのことで、お酒とお料理、そしてアコーディオンの演奏がなければ、「ガンゲット」と呼ぶことはできません。
下町の片隅のお店で音楽に合わせてお客さんが踊ったり呑んだり、ときに大騒ぎをしている。良くも悪くも、そんな旧いパリのカオスな雰囲気が、ここにはあります。

永井:ラオスへの支援活動もされているそうですが、どのような経緯があったのでしょうか。

長嶺:演奏や授業で訪問した小中学校で「使用しないアコーディオンが眠っている」という話を数多く耳にしました。少子化による学校統合などで使われなくなった楽器が、故障や経年劣化で傷んだまま置かれ、バンドメンバーの有志でアコーディオンを引き取り整備し、リユースの提案活動を始めました。
しかし、自治体が所有する小中学校の備品を有志団体で引き取るのが厳しく、2017年にNPO法人「ノルドミューズ」を立ち上げました。教育委員会の協力もあり、リユース活動をスムーズに進められ、今では全道の学校から依頼が来ます。
リサイクルしたアコーディオンを開発途上国の教育で活用出来ないかと考えていた時、ラオスで滞在歴がある方とメンバーが知り合いになったのがきっかけとなり、アテンドを依頼、ラオスへ渡航しました。
運よく多くの現地の協力者に恵まれ、ラオスの学校へのアコーディオン寄贈と音楽教育支援活動が始まりました。









第二章 ~三重野さんが提案するハーブの商品化とフェアトレードへの挑戦~

三重野さん:ラオスの地方部には貧しい家が多く、自給自足の野良仕事に追われて学校に通うことができない子どもたちもいます。音楽教育支援の活動をしていく中、どうしたら住民の生活を少しでも豊かにできるだろうか、と考えるようになりました。
そんな中、フードコーディネーター・ハーバリストである三重野が、ラオスの田舎の畔や路傍に茂っている薬草やハーブの存在に着目。このハーブを農家の人々が自らの手で商品化し、収入を得ることができれば、子どもたちが学校に行けるようになるのでは、と考えました。
試行錯誤を重ねている中、偶然、現地で農園を営む日本人と出会い、加工に必要な洗浄や乾燥のコツを教えてもらうことができました。
しかし、製品の輸出と日本国内での販売は想像以上に規制や検査が厳しく、プロジェクトはなかなか前に進みません。
そしてコロナ禍、ラオスはロックダウン。日本からの渡航もできなくなりましたがあきらめず、現地の協力者とオンラインでつながりながら、着々と製造工程の改善を継続。
その頃、私たちの活動が新聞に取り上げられ、記事を見たJICAの方からJICA基金の活用を勧められました。結果、提案事業が採択され、資金助成が認められました。
またプロジェクト推進にあたり、これまでの音楽教育支援とは別法人が必要となったため、このタイミングで新たなNPO「マイラオスほっかいどう」を立ち上げたのです。
この助成事業は2022年9月から10月にかけて実施。
ラオス人のサポーターと連携し、日本からオンライン講座でハーブの効能や成分をレクチャーした後、現地に行き、手づくりハーブティーの製造技術を一週間集中して指導しました。
ラオスの人々はみな、とても手際が良く、作業能力も高くて、どこに出しても引けを取らない、素晴らしいハーブティーが出来上がりました。これまで学ぶ場や就労先が無かったというだけで、彼らの可能性は無限大です。
講座最終日、全員に修了証を渡したところ、思わず泣き出してしまう人もいました。学校に通ったことが無い人もいたようなので、無事講座を終えて感無量だったようです。
現在、プロジェクトは村の若者グループがけん引し、自立的に進んでいます。輸出販売もラオス商工省貿易促進局がサポートをしてくれることになり、一安心です。
★写真提供:ガンゲット・ダイマさん











第三章 ~アコーディオン、食文化、ラオス、フランスがつながるガンゲット・ダイマは大切な交流の場~

永井:いくつも法人を立ち上げ、いろいろな活動を展開されていますね。

長嶺:独学でアコーディオンを演奏していた私は、学問的にも音楽を学んでみたいと思い、45歳で北海道教育大学に入学し、音楽学を専攻。その知識を世の中の課題解決に活かしたいと考え、卒業後は北海道大学の公共政策大学院へと進みました。
他の人からは、いろいろやっているね、と言われますが、私の中ではこの店も演奏活動もラオス支援も一環として考えています。
ラオスでは小中学校で音楽教育が行われておらず、学校に楽器もない、ドレミファ…の音階や楽譜が理解できる教員もいません。祭りやイベントなどで伝統的な民族音楽が奏でられることはあっても、一般人が楽器演奏や、コンサートなどで他の音楽に触れる機会は乏しいです。
私たちはまずラオスで政府や教育関係者を集めて、コンサートを開き、いつものようにフランスのミュゼット音楽を演奏。かつての、フランス植民地時代の苦い記憶のためか、客席は微妙に硬い雰囲気に包まれていました。
しかし、練習してきたラオスの伝統曲の演奏を始めると会場は一転。みな立ち上がり、音楽に合わせ大合唱を始め、よい雰囲気の中で演奏を終えることができ、安心しました。
その後、ラオス政府より学校でのアコーディオン指導の正式な許可がおり、私たちが手づくりしたテキストも使えることになりました。音楽が国と国の垣根を越えて信頼関係を築く力があることを実感した出来事です。
このように、私たちの中で、フランス、日本、ラオスがつながっています。

永井:ガンゲット・ダイマさんの店内で、ラオスの商品は買えますか?

長嶺:はい。ラオスの農家の人々の手づくりハーブティーや石鹸、竹製品や手芸品などのフェアトレード製品を販売しています。なかなか手に入らないレアな商品ばかりです。

永井:アコーディオンの演奏会やライブにも参加できるそうですね。

長嶺:アコーディオンのミュゼット音楽を全面的に出しているお店は全国でも数少なく、道外や海外のお客様もいらっしゃいます。バルミュゼットは労働者のまちの大衆音楽。創成イーストの下町感と旧き良きパリの心象風景が重なるこのロケーションを、私たちもお客様も楽しんでいます。
毎月、最終日曜日の18時から「蛇腹夜会」を開催しています。蛇腹(じゃばら)はアコーディオンの伸び縮みする空気入れの部分のことです。夜会には幅広い世代の方が来られ、音楽を演奏する人、聴く人共に、音楽を通じた交流の場になっています。
アコーディオンの他にも、様々なジャンルのミュージシャンのライブも毎週末開催しています。
お店のHPでライブ情報を確認し、ぜひ聴きにいらしてください。
★写真提供一部:ガンゲット・ダイマさん











プロフィール

  • 長嶺 久美子さんと三重野 直美さん

    取材先:ガンゲット・ダイマ
    所在地:札幌市中央区南3条東1丁目6
    アクセス: 地下鉄「大通駅」「すすきの駅(南北線)」、「バスセンター駅(東西線)」、「豊水すすきの駅(東豊線)」 から、ともに徒歩8分程度
    お問合せ:info@guinguette-daima.com
    電話:011-222-8522(18:00~)

    NPO法人ノルドミューズ「ひびけアコーディオン」:https://www.facebook.com/hibike.accordion
    NPO法人マイラオスほっかいどう:https://www.facebook.com/MaiLAOSHokkaido

    公式サイト:http://guinguette-daima.com/

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